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社会の有るがままを、
世界の有るがままを。

「オクターブの世界」

オクターブの世界 ⑥

 パパは仕事から帰ると、ママにかけよって抱きしめた。  ママは恥ずかしそうに、苦笑いするのが見えた。 「よかったー、ほんとによかった。ママ、見ておくれ。おれが、お払いをしてもらったんだよ、ほら。しかし、効き目あるもんだなあ」  ママをコップの前に連れていって、お札を見せている。  説明する気になれない私は、苦笑いした。  ママは「お料理、したかった」っていって、にこにこしながら、ハンバーグを作った。タっくんと私で料理をはこんで、四人で食べた。 「おいしい。ママの料理、サイコー!」  私が手をつき

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「縁の下のブー」

「縁の下のブー」⑥

 夏休みまで一週間をきった日、ということはノブオと別れるまで一週間をきった日、梅雨が明けた。夏の始まりの強い日差しが校庭に照りつけて、気温をぐんぐんと上げてゆく。僕たちは夏休みの予感を感じて、いつもよりすっと早く一日が過ぎた。  電話が鳴ったのは、夜の八時近かった。「ノブオくんが、そちらのお宅にお邪魔していませんか?」という電話だった。話を聞くと、ノブオが行方不明になっているという。さらに聞けば、学校の飼育小屋の戸が開いていて、中にいた豚もいなくなっているということだった。  学校から「手分けを

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」⑥

 いつもと違って運転するのは、お母さん。助手席には、お父さんがすわっている。そして突然、大きな声を上げた。 「あ、保険証忘れた!」 「入れておきましたよ、小さいバックのなか」  お母さんは余裕で答える。  まだ裸のイチョウ並木を通って、高速道路をくぐると、左側に僕の学校が見えてくる。 「四月には、もう六年生だな」 「うん」  お父さんは考えごとをしているみたいに、学校を見ていた。 「……小学生のときに、お父さんイジメられていて、半年くらい学校に行けなくなったことがあったんだ。だから裕明には強くな

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「オクターブの世界」

オクターブの世界 ⑤

    四日目    今日は土曜日だけど、パパは仕事が半日あるといって出かけた。 私たちは少しこげたトーストとハムエッグ、それにサニーレタスのサラダを食べた。食べながらタっくんは新幹線メガネを不思議そうに見ているので、私は夜中に見た光るヒモの話をした。タっくんはただ、静かにうなずきながら聞いている。 「お姉さん、もう一度、挑戦してみます」  長机をキレイにして、タっくんはスライドガラスをゆっくりと置いた。そして深呼吸をすると、渦巻き新幹線メガネをかけた。 スライドガラスの水に、渦巻くレ

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「縁の下のブー」

「縁の下のブー」⑤

 日がたつにつれて、ノブオの生気が無くなっていった。カメの水替えのときにも、ノブオが手を滑らせて水槽を引っくり返してしまった。教室は水浸しで、カメは慌ててあちこちに逃げていく。この時もノブオは、ただ呆然と立ち尽くしていた。  ルリ子さんと会った日以来、タツヤがノブオを虐めることが全くなくなった。それでもノブオにちょっかいを出す奴は、何人かいた。僕は勇気をだして注意したいと毎日思うのに、出来なかった。  七月も中旬になるころ、河合先生からお知らせがあった。 「ここにきて突然のことだけど、ノブオくん

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」⑤

 そしてそれは、友達の家へ遊びに行く途中のことだった。  救急車のサイレンが鳴り止んだので、僕は通りを見た。  会社のビルがならぶ大きな通りの交差点で、ダンプカーとトラックが追突している。二台とも前の運転席がつぶれていて、消防隊の人が中をのぞき込んでいた。その周りや歩道には沢山の人が立ち止まって、救助する様子を見ている。  僕も近くまでいった。心臓の鼓動が早くなっていく。つぶれたダンプのドアが機械を使ってはずされ、消防隊員が二人がかりで大きなドアを持ち、アスファルトにもれた真っ黒いオイルの上を歩

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「オクターブの世界」

オクターブの世界 ④

    三日目    次の日の学校の、それは休み時間に起こった。  私はレイちゃんと『ゴジラと熊さん、ラブLOVE』ごっこをしていた。レイちゃんが「ゴジラと♪」といって私を見つめて指さし、私が「熊さん♪」とレイちゃんを横目で見て指さし、二人そろって「ラブ、ラブ~♪」と両手で胸をドッキンドッキンさせたり、足をヒザから激しく上げたりしながら踊る、二人の仲直りダンスごっこ。  これを、最高の笑顔で踊りつづけるんです。  ゴジラと♪、熊さん♪、ラブ、ラブ~♪、ゴジラと♪、熊さん♪、ラブ、ラブ♪

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「縁の下のブー」

「縁の下のブー」④

 七月に入っても梅雨空はつづき、後半になるほど強い雨が降るようになった。この雨と同じように、タツヤがするノブオへの虐めも、激しくなっていった。校庭で見つけるとボールを当てたり、歩いているノブオを後ろから蹴ったり、ホースからの水をかけて服を台無しにする。  タツヤの虐めが激しくなるにつれて、同調してやる人は少なくなっていったが、みんなタツヤのことが怖いので、誰もが関わりのない存在として見ているだけだった。  午後には雨がやんで、僕が帰るころには強い風が吹いていた。川沿いを歩いていると、土手の草木が

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」④

 ある日曜日、お母さんが呼びにきて、初めて僕の絵に気づいた。 「裕明、ちょっと来てくれる。あれっ」  パートで忙しいから、最近お母さんは僕の部屋の中も見てなかったのかな。お母さんは「すごいねー」っていってた。  夕飯を食べるときのように、お父さんとお母さんは席についている。お父さんが真剣な顔して、僕を見すえた。とうとう、空手教室よりも、もっときびしいところへ行かされるんだ。 「ずっと考えてたんだが、お父さんが行くことにした。一人でな」  えっ? 僕は意味が分からなくて、お父さんを見た。 「ここか

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「オクターブの世界」

オクターブの世界 ③

    二日目    えーと、中途半端なかんじで寝てしまったな。 「ちょっと、タっくん。あなた夕ご飯、また食べなかったの?」  起きてきたタっくんは、お目めスッキリ。 「いいえ。お父さんに、けんちん汁を温めてもらいました」 「そうでしたか。えー、なにかよそよそしくありませんか?」 「いいえ、普通ですが。お姉さんも、同じような感じですよ」 「いや、私は、ついつい口調を合わせてしまう人ですから」  あー、なんかやりずらいな。  タっくんはすぐ机に向かって、なにやら描きはじめた。画用紙に定規を使って、

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変わってゆく社会に、足りないものを思いついたら、まずは作ってみる。
Webサイト制作やランディングページ制作。動画制作、ドローン空撮などなど。未来に関することの全般がお仕事です。

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