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社会の有るがままを、
世界の有るがままを。

「みたことのない朝」

「みたことのない朝」⑤

 そしてそれは、友達の家へ遊びに行く途中のことだった。  救急車のサイレンが鳴り止んだので、僕は通りを見た。  会社のビルがならぶ大きな通りの交差点で、ダンプカーとトラックが追突している。二台とも前の運転席がつぶれていて、消防隊の人が中をのぞき込んでいた。その周りや歩道には沢山の人が立ち止まって、救助する様子を見ている。  僕も近くまでいった。心臓の鼓動が早くなっていく。つぶれたダンプのドアが機械を使ってはずされ、消防隊員が二人がかりで大きなドアを持ち、アスファルトにもれた真っ黒いオイルの上を歩

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「オクターブの世界」

オクターブの世界 ④

    三日目    次の日の学校の、それは休み時間に起こった。  私はレイちゃんと『ゴジラと熊さん、ラブLOVE』ごっこをしていた。レイちゃんが「ゴジラと♪」といって私を見つめて指さし、私が「熊さん♪」とレイちゃんを横目で見て指さし、二人そろって「ラブ、ラブ~♪」と両手で胸をドッキンドッキンさせたり、足をヒザから激しく上げたりしながら踊る、二人の仲直りダンスごっこ。  これを、最高の笑顔で踊りつづけるんです。  ゴジラと♪、熊さん♪、ラブ、ラブ~♪、ゴジラと♪、熊さん♪、ラブ、ラブ♪

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「縁の下のブー」

「縁の下のブー」④

 七月に入っても梅雨空はつづき、後半になるほど強い雨が降るようになった。この雨と同じように、タツヤがするノブオへの虐めも、激しくなっていった。校庭で見つけるとボールを当てたり、歩いているノブオを後ろから蹴ったり、ホースからの水をかけて服を台無しにする。  タツヤの虐めが激しくなるにつれて、同調してやる人は少なくなっていったが、みんなタツヤのことが怖いので、誰もが関わりのない存在として見ているだけだった。  午後には雨がやんで、僕が帰るころには強い風が吹いていた。川沿いを歩いていると、土手の草木が

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」④

 ある日曜日、お母さんが呼びにきて、初めて僕の絵に気づいた。 「裕明、ちょっと来てくれる。あれっ」  パートで忙しいから、最近お母さんは僕の部屋の中も見てなかったのかな。お母さんは「すごいねー」っていってた。  夕飯を食べるときのように、お父さんとお母さんは席についている。お父さんが真剣な顔して、僕を見すえた。とうとう、空手教室よりも、もっときびしいところへ行かされるんだ。 「ずっと考えてたんだが、お父さんが行くことにした。一人でな」  えっ? 僕は意味が分からなくて、お父さんを見た。 「ここか

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「オクターブの世界」

オクターブの世界 ③

    二日目    えーと、中途半端なかんじで寝てしまったな。 「ちょっと、タっくん。あなた夕ご飯、また食べなかったの?」  起きてきたタっくんは、お目めスッキリ。 「いいえ。お父さんに、けんちん汁を温めてもらいました」 「そうでしたか。えー、なにかよそよそしくありませんか?」 「いいえ、普通ですが。お姉さんも、同じような感じですよ」 「いや、私は、ついつい口調を合わせてしまう人ですから」  あー、なんかやりずらいな。  タっくんはすぐ机に向かって、なにやら描きはじめた。画用紙に定規を使って、

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「縁の下のブー」

「縁の下のブー」③

 河合先生は黒板に「共生」と書いて、振り返った。白いブラウスときれいな紺のスカートが、髪の長い先生に似合っている。 「キョウセイ、と読みます。どういうことかというと、違った種類のものと同じ場所で共に生きる、という意味です。私たちに置き換えて考えてみると、この町にも外国から来た人が沢山住んでいます。いろいろな国から日本にやって来て、この町に住んでいる。言葉も、食事の仕方も、考え方も違う人たちと、どうしたらお互い幸せに、上手く生活していけるのか? もっと身近なことを考えてみると、この教室の友達同士、

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」③

 お父さんは、あれから走ろうといってこなかった。なにもなかったみたいにして、僕に話しかけた。 金曜日は、運動会のあとはじめての空手の日だ。僕はもう、空手の教室に行きたくない。弱くて運動の苦手な僕を、なんとかしようと思って空手教室に通わせたんだろうなってのは分かってる。でも形はふらふらするし、いつまでたっても上手くならない。後からはじめた貴広は、あっというまに僕を抜かして上達していった。 お母さんが両手にいっぱいの買い物袋をかかえて帰ってきた。 「ごめんごめん、遅くなっちゃたね。空手、間に合うかな

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「オクターブの世界」

オクターブの世界 ②

    一日目    始業式が終わったあとの教室で、クラスの友達は元気いっぱい。海に行ったとか、ディズニーランドに行ったとか、山でキャンプしたとか。たくさんの思い出が飛びかっちゃってます。  私は、といえば。ママが家からいなくなったことを、話したほうがいいのかな? 例えば、仲のいい友達にだけはとか。どうなんだろう。話さないでいると、なんだか、とても大きな秘密を隠しているような気になって、普通でいられない。  例えばさっき、仲良しのレイちゃんが、怖い顔してきたでしょ。 「あー、あー、モエ

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「縁の下のブー」

「縁の下のブー」②

 日が落ちるまで近所で遊んだあと、急いで自転車をこいだ。僕の家の斜め前には、タツヤのアパートがある。カラスが鳴いたので何気なく目をやると、タツヤの部屋のドアを開けて、見たことのない男の人が中へ入っていった。気にもしないで、自転車を下りた。  僕の家は、お店をしている。お父さんとお母さんは白い仕事着に白い帽子をかぶって、いつも店に立っている。お母さんはショーケースの後ろに立って、笑いながらお客さんと会話する。その奥で少し太っちょのお父さんが、包丁を手に作業する。僕はランドセルを背負ったまま「ただい

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」②

 自分の机に向かって、僕は絵を描いた。E259系やE26系カシオペア、新幹線や在来線。僕の好きなもので埋め尽くした。  途中でHBの鉛筆が紙に引っかかるような、ギスギス硬い感じが気になってきた。たしか一本だけあった2Bの鉛筆を探した。それで描くと、やわらかく紙につく感じがして落ちついた。  次の日の朝、お父さんの声がして目が覚めた。いつもの時間、六時ちょうどに。 「いい天気だぞー、裕明。さあ、起きろ」  いつもより、ちょっと元気を足しているような声だった。僕は壁のほうに寝返りをうった。また、お父

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変わってゆく社会に、足りないものを思いついたら、まずは作ってみる。
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