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社会の有るがままを、
世界の有るがままを。

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スゲカエ ⑥

  〈意味分かんない男三人〉  誠司は八年ぶりの直射日光を手で避け、目を細めた。部屋でいつも聞いていた以上の雑多な音まで混じって、一斉に押し寄せてくる。熱気と共に活気や倦怠、疲労や生き死にといったものが綯交ぜとなった、強い草いきれを含んだ風が誠司の鼻を突く。  八郎太と直也もそれぞれ、手には黒塗りのゴーグルを持っている。これに各自のスマホをセットして、インストールしてある試作「スゲカエ」アプリを町で試すのだ。ゴーグルをつけると3D映像の視界が狭いため、大通りの歩道にでてから試すことになっている。

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スゲカエ ⑤

〈田中直也〉  三限目のメディア文化論まで取り、直也は埼玉大学をでた。熊谷に向かう電車の中でも落ち着かず、朝からの漠然とした不安が居座っている。音楽を聞く気にもなれなくて、ただ車窓から流れる景色を見ていた。誠司の家に行く前にコンビニへ寄り、カフェオレを三つ買った。  玄関に出てきたのは八郎太だった。八郎太について階段を上り、部屋の中に入った。床に胡座をかいて機械をいじっていた誠司が、ゆっくり顔を上げ「やあ」といった。口角を僅かに上げてつくった微笑が、八年間引き籠もっている誠司の精一杯の歓迎なんだ

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Love is Over ?

Love is Over ? ②

   店が定休日の平日に、北沢さんから電話があった。初夏の蒸し暑い日だった。私を呼ぶつもりではなかったのだろうけど、彼の話を聞いているうちに、私は行くことにした。車で五分とかからない。  さばえ商店街に着くと北沢さんが立っていた。そして彼の視線の先には、高校生の男の子がいる。まるで茫然自失といった状態だった。北沢さんの話によると、仕事の打ち合わせの帰りに高校生二人に出会したのだという。二人は口論をしていて、ちょうど女の子が立ち去ったところだった。  私は目の当たりにし、言葉が見つからな

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スゲカエ ④

   そして三日目、八郎太が昼食を食べ終わってテレビを観ていると、昨日と同じ時間に誠司が降りてきた。八郎太は誠司の前に座って、昔話やら他愛もない話をしている。そんな八郎太の話を聞いているのかいないのか、誠司は食べ終えると食器を洗い始めた。 「何だかんだいって変わってないな、誠司」 「僕は時間が止まっているから。でも八郎太も変わってない。ストレスかかったり緊張すると、関西弁もどきになるとことか」  誠司はくすりと笑った。そして、そのまま二階に上がっていった。八郎太は誠司を目で追い、見えなくなると何

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スゲカエ ③

   用意したのはマンガとスマホの予備バッテリー、タオルと水筒とヌンチャク、それに読みかけの「無理せず腹筋を十個つくる方法」。  持久戦への準備を適当に整え、八郎太は原チャリを一度吹かしてから田沼宅にとめた。車庫には昨日の帰りに見た二台の車のうち、一台だけが停まっている。二台とも国産セダンだったので、誠司の両親どちらが家にいるのか車からでは分からない。平日の朝八時。八郎太はインターフォンを押した。それとほぼ同時に玄関のドアが突然開いた。  誠司の母だった。タイトなグレーのスカートスーツで、八郎太

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Love is Over ?

Love is Over ? ①

   鯖江の街に梅雨がきたのは、北沢さんと最後に会う約束をした日のことだった。  シックな服装を意識し、施した薄化粧は、ささやかな私の演出のつもりでもある。 「この五年のあいだ、喧嘩すらしたことのない僕たちが、どうして別れなければならないのだろう」  私が切り出したあと、独り言のように北沢さんは呟いた。西山公園の中腹からは、園内で散歩する人たちを見下ろすことができる。でもこの天気では、人は疎らにしかいない。 「悲しいけれど、終わりにしましょう。きりがないから」私がいうと、「Love is ove

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スゲカエ ②

   テスト用にネット上の動画を使って、スゲカエ動作をチェックしてゆく。元動画は海外のもので、画面に映る部屋は誕生日の鮮やかな飾りがされ、中央から主役の女の子が笑顔で踊りながら歩いてくる。そしてカメラの周りにいる人たちのサプライズによって、女の子の顔が驚きに変わり、状況理解につれ喜びの表情へと移っていって声を上げる。これをアプリによりスゲカエた動画は、竹内こずえの顔が高水準でシンクロする。元動画とスゲカエた動画の二つを同時に再生しても、その表情変化に確認できる差異はない。  誠司はスゲカエた動画

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スゲカエ ①

       「スゲカエ」        〈田沼誠司〉  羅列されたソースコードが人を動かさないことを、田沼誠司は知っている。しかし自分が発した言葉の意味に反して他人が反応する、人間の感情や自尊心、競争心や嫉妬などの複雑な問題について、絶対に関わりたくないと心底思っている。コンピュータが意図した反応を示さないのは、自ら記述したコードの誤りによる。誠司は意図と反応の直線的な世界が好きであり、故に未だ引き籠もっている。  部屋は質素に整い、例えいま血管が破裂しても特に問題なく死に逝ける。窓は磨りガラ

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A Strange Affinity

  いつもと違う朝だった。 焼きすぎたトーストにアップルバターをぬりながら、ママの不出来な小言を聴きながら、ここ数日つづく離人感が漂っているのを改めて自覚していた。 そもそも何でこんな事になったのか考えてみるけど、駄目だ、頭が混乱している。   曇り空を見上げて通りにでると、隣のおばさんが自慢のローズガーデンを手入れしながら声をかけてくる。いつもみたいに理想的な返事をかえすことなく、ただ黙って通り過ぎる男を俯瞰するような感覚で、僕は通り過ぎた。   「過去が侵食している」   その可能性について

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カエデの葉束

  小さなころ、おじいちゃんとよく散歩した。バニュー墓地の並木が好きだった。 雨上がりの街は冷たい空気に入れかわり、白い手編み帽を引っぱって、わたしは耳を隠す。 そして先を歩くおじいちゃんを追い越すと、輝く水たまりを見つけてのぞき込んだ。 そこには深くて青い秋の空が映り、おじいちゃんの顔が浮かんで見えた。 思わず顔を上げて、わたしはおじいちゃんと笑った。 そのとき、横を女の子が通り過ぎた。 いつも見かける女の子だった。ひとつ年が上の、名前も知らない女の子。 くすんだ服は体の芯まで冷えそ

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変わってゆく社会に、足りないものを思いついたら、まずは作ってみる。
Webサイト制作やランディングページ制作。動画制作、ドローン空撮などなど。未来に関することの全般がお仕事です。

「 IT×行政書士 」をキャッチフレーズに、地方自治体の地域活性化を ITの面からサポート応援していきます。
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