
スゲカエ ⑥
〈意味分かんない男三人〉 誠司は八年ぶりの直射日光を手で避け、目を細めた。部屋でいつも聞いていた以上の雑多な音まで混じって、一斉に押し寄せてくる。熱気と共に活気や倦怠、疲労や生き死にといったものが綯交ぜとなった、強い草いきれを含んだ風が誠司の鼻を突く。 八郎太と直也もそれぞれ、手には黒塗りのゴーグルを持っている。これに各自のスマホをセットして、インストールしてある試作「スゲカエ」アプリを町で試すのだ。ゴーグルをつけると3D映像の視界が狭いため、大通りの歩道にでてから試すことになっている。