内心の自由とTempnology

新元号が「令和」と発表された四月。

気になっていた方もいらっしゃるかもしれませんが、数十年続く長寿番組のいくつもが三月末で幕を閉じました。その中には視聴率や聴取率で高い数字を上げながら打ち切りとなった番組もあります。それほど人々や社会が、改元を控え二十年代を目前にするいま、この新年度とともに、新しい時代の切り替えタイミングにしたいという強い意識がうかがえたのだと思います。

日進月歩の技術の中で、新時代を象徴する技術の一つとして「心の考えたこと」をデジタル情報として抽出する技術の研究が進んでいます。

フェイスブックは「ダイレクト・ブレーン・インターフェース」という、頭に思い浮かべるだけで文章が書けるコンピューターの入力技術の研究開発を進めていて、頭の中にあるさまざまな考えから、発言すると決定して会話中枢に送られた言葉を解読するそうです。

コロンビア大学でニューロエンジニアリングについて研究するニマ・メスガラニ准教授は、脳の信号を「耳で聞いて理解可能な会話音声」に変換するシステムを開発しています。この技術を使えば、これまでに前例のないレベルで脳波から人の話し言葉を生成することが可能になるようです。

カリフォルニア大学バークレー校のロバート・ナイト教授のチームは、数年に渡る研究の末、ついに人の脳内の単語を再生することに90%の精度で成功したといいます。さらに研究チームは、脳を直接録音することで、頭に思い浮かべた特定の言葉まで解読することに成功したそうです。

ワシントン大学の研究者タマラ・ボナチは、脳に接続される7つの電極インターフェースを被験者の頭に取り付け、脳波信号をリアルタイムで測定。サブリミナル画像への脳神経反応を調べることで、イメージに関する被験者の考えや感情を知る手がかりを収集できたといいます。

京都大の神谷之康教授も同様の研究を進めているようです。これらの技術は筋萎縮性側索硬化症患者や脳卒中から回復した人など、脳は機能しているものの上手く話すことができない人が外界とのコミュニケーション能力を取り戻すための大きな助けとなる可能性が期待されるとともに、「脳内ハッキング」などの危険性も大きなリスクとして横たわっています。

ここで一つの懸念を覚えます。VRヘッドセットやフィットネスアプリと連動した身体に装着する端末が、脳の電気信号を収集し送信していたらビッグデータとしての価値は計り知れないでしょう。データはいまや金脈です。実際に企業が秘密裏に情報収集していないとしても、常にその「誘惑」は存在します。これまで不可能だったことが技術の急速な発展とともに可能となり、それとともに肥大し続ける「誘惑」。
すでに顕在化し未来を象徴するこの現象を表す言葉として、技術(Technology)による誘惑(Temptation)の造語で、テンプノロジー(Temp+nology)と名付けることができます。

研究者タマラ・ボナチは今後起こりうる「脳内ハッキング」に対し、脳が生成する電気信号は、個人を特定できる情報に分類し、名前や住所、年齢と同様に保護されるべきだと述べています。

これらのニュースを聞くたびに私が考えるのは、憲法十九条との関係です。

日本国憲法 第十九条

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

憲法十九条は、信教の自由や表現の自由など精神的自由の前提となる総則的規定で、「内心の自由」と呼ばれるものです。統治権力に対して「内心の自由」への強制を禁止することは、近代民主主義国ではその存立の基礎として規定されるものです。
心のなかで考えることは自由に決まっているけれど、それすらままならない時代があったのでしょう。

いまでは当たり前になった自由が、新しい技術によって脅かされるのではないでしょうか。

「内心の自由」が自由足り得るのは、その「心のお喋り」がリアル世界に出力されないからです。例えば「心のお喋り」が言葉として出力された瞬間から、他人の権利と衝突して制限を受けます。こんなことはつらつら述べるまでもなく、誰でも分かっていることです。

でも、いくら憲法で保障されていたとしても、自らの意思でなく脳内ハッキングにより現実世界に出力されてしまったとしても、あなたの「心のお喋り」が音声やテキスト情報として出力された以上、制限の対象になるし、他人を傷つける効果を持つし、あなたが軽蔑され社会的信用を貶める事態になるかもしれません。

ワシントン大学の研究者タマラ・ボナチがいうように、心のお喋りの現象である「脳が生成する電気信号」を、最重要の個人情報として保護する体制が求められるようになるでしょう。それには早いうちからその意識を高め、EUが先導するGDPRなどの潮流と同期して、巨大テック企業に網をかけていく工程が必要になります。

寒気が抜けた日曜日の今日、桜が満開となったところも多いことでしょう。春うららの街並みに花粉が舞い、マスクをつけた人だらけの日本社会にプラスして、脳内ハッキング防止のヘッドギアをつけた人だらけの未来にならないことを祈るばかりです。

変わってゆく社会に、足りないものを思いついたら、まずは作ってみる。
Webサイト制作やランディングページ制作。動画制作、ドローン空撮などなど。未来に関することの全般がお仕事です。

「 IT×行政書士 」をキャッチフレーズに、地方自治体の地域活性化を ITの面からサポート応援していきます。
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