
「みたことのない朝」⑥
いつもと違って運転するのは、お母さん。助手席には、お父さんがすわっている。そして突然、大きな声を上げた。 「あ、保険証忘れた!」 「入れておきましたよ、小さいバックのなか」 お母さんは余裕で答える。 まだ裸のイチョウ並木を通って、高速道路をくぐると、左側に僕の学校が見えてくる。 「四月には、もう六年生だな」 「うん」 お父さんは考えごとをしているみたいに、学校を見ていた。 「……小学生のときに、お父さんイジメられていて、半年くらい学校に行けなくなったことがあったんだ。だから裕明には強くな