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社会の有るがままを、
世界の有るがままを。

「みたことのない朝」

「みたことのない朝」⑥

 いつもと違って運転するのは、お母さん。助手席には、お父さんがすわっている。そして突然、大きな声を上げた。 「あ、保険証忘れた!」 「入れておきましたよ、小さいバックのなか」  お母さんは余裕で答える。  まだ裸のイチョウ並木を通って、高速道路をくぐると、左側に僕の学校が見えてくる。 「四月には、もう六年生だな」 「うん」  お父さんは考えごとをしているみたいに、学校を見ていた。 「……小学生のときに、お父さんイジメられていて、半年くらい学校に行けなくなったことがあったんだ。だから裕明には強くな

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」⑤

 そしてそれは、友達の家へ遊びに行く途中のことだった。  救急車のサイレンが鳴り止んだので、僕は通りを見た。  会社のビルがならぶ大きな通りの交差点で、ダンプカーとトラックが追突している。二台とも前の運転席がつぶれていて、消防隊の人が中をのぞき込んでいた。その周りや歩道には沢山の人が立ち止まって、救助する様子を見ている。  僕も近くまでいった。心臓の鼓動が早くなっていく。つぶれたダンプのドアが機械を使ってはずされ、消防隊員が二人がかりで大きなドアを持ち、アスファルトにもれた真っ黒いオイルの上を歩

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」④

 ある日曜日、お母さんが呼びにきて、初めて僕の絵に気づいた。 「裕明、ちょっと来てくれる。あれっ」  パートで忙しいから、最近お母さんは僕の部屋の中も見てなかったのかな。お母さんは「すごいねー」っていってた。  夕飯を食べるときのように、お父さんとお母さんは席についている。お父さんが真剣な顔して、僕を見すえた。とうとう、空手教室よりも、もっときびしいところへ行かされるんだ。 「ずっと考えてたんだが、お父さんが行くことにした。一人でな」  えっ? 僕は意味が分からなくて、お父さんを見た。 「ここか

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」③

 お父さんは、あれから走ろうといってこなかった。なにもなかったみたいにして、僕に話しかけた。 金曜日は、運動会のあとはじめての空手の日だ。僕はもう、空手の教室に行きたくない。弱くて運動の苦手な僕を、なんとかしようと思って空手教室に通わせたんだろうなってのは分かってる。でも形はふらふらするし、いつまでたっても上手くならない。後からはじめた貴広は、あっというまに僕を抜かして上達していった。 お母さんが両手にいっぱいの買い物袋をかかえて帰ってきた。 「ごめんごめん、遅くなっちゃたね。空手、間に合うかな

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」②

 自分の机に向かって、僕は絵を描いた。E259系やE26系カシオペア、新幹線や在来線。僕の好きなもので埋め尽くした。  途中でHBの鉛筆が紙に引っかかるような、ギスギス硬い感じが気になってきた。たしか一本だけあった2Bの鉛筆を探した。それで描くと、やわらかく紙につく感じがして落ちついた。  次の日の朝、お父さんの声がして目が覚めた。いつもの時間、六時ちょうどに。 「いい天気だぞー、裕明。さあ、起きろ」  いつもより、ちょっと元気を足しているような声だった。僕は壁のほうに寝返りをうった。また、お父

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「みたことのない朝」

「みたことのない朝」①

  「みたことのない朝」    クラス対抗選抜リレーで負けた。  僕のせいで負けた。  貴広から一番でまわってきたバトンを受けとった僕は、コーナーの最後で転んだ。後ろから追い上げてくる足音を聞いて、焦って転んだ。他のランナーにも抜けれて、僕のクラスはビリになった。  総合得点でトップだった僕のクラスは、最後のクラス対抗選抜リレーの得点がひびいて、優勝を逃した。  閉会式でクラスのみんなは痛々しく僕を見ていたと思う。そんな視線を感じて、誰とも目を合わせられなかった。そして教室にもどってす

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変わってゆく社会に、足りないものを思いついたら、まずは作ってみる。
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